消化器疾患
食道アカラシア(Esophageal Achalasia)
2025/8/2
1. 特徴
食道アカラシアとは、食道と胃のつなぎ目(下部食道括約筋:LES)が緩まず、食べ物が食道内に停滞してしまう病気です。
「詰まる」「飲み込めない」「胸に残る感じ」が特徴で、若年〜中年層にも発症しやすく、慢性化しやすい疾患です。
早期では軽い違和感のみですが、進行すると体重減少や食道の拡張、逆流・夜間の咳・誤嚥性肺炎のリスクも伴います。
2. 原因
食道下部の自律神経機能の障害(アウエルバッハ神経叢の変性)
明確な原因は不明(特発性がほとんど)
稀にウイルス感染、自己免疫、遺伝が関与
二次性アカラシア(がんなどによる二次的障害)もあり、鑑別が必要
3. 症状
飲食物(特に固形物)の飲み込みづらさ(嚥下困難)
食後の胸部不快感・つかえ感
食道内に残った食べ物が逆流し、咳や気管への誤嚥
夜間に逆流し、むせ・咳・呼吸困難
長期的には体重減少・栄養障害・うつ傾向も
4. 分類
原発性アカラシア(特発性)
└ 神経機能の異常によるもの続発性アカラシア(症候性)
└ 胃がん・食道がん・シャーガス病などに続発する
さらに、近年では高分解能内圧検査によりChicago分類(Ⅰ型〜Ⅲ型)に細分類され、治療選択に関与しています。
5. 診断方法
バリウム造影(コマ形・ラッパ状の狭窄)
内視鏡(がんなどの除外・食道拡張の確認)
高分解能食道内圧検査(HRM:最も重要)
CT・胸部レントゲン(食道拡張・誤嚥性肺炎の確認)
血液検査で他疾患の除外も
6. 治療方法(西洋医学)
保存的治療
食事指導(よく噛む・少量ずつ・就寝前食事回避)
内服薬:カルシウム拮抗薬・硝酸薬などでLESを緩める(効果は限定的)
内視鏡的治療
バルーン拡張術(PBD):LESを機械的に広げる
内視鏡的筋層切開術(POEM):内視鏡で筋層を切開して開放(現在の主流)
外科手術
Heller法(腹腔鏡下筋層切開術)+抗逆流手術
※重度の逆流性食道炎には注意が必要
7. 予後と注意点(西洋医学)
POEMやバルーン拡張で多くの症例が改善
ただし、再発例や治療後の逆流性食道炎に注意が必要
内科・外科・栄養・精神面のチーム医療的対応が望ましい
難病指定されており、医療費助成対象となるケースもあり
8. 東洋医学での解釈
食道アカラシアは、東洋医学では以下のように見立てられます
噎膈(えっかく)・梅核気(ばいかくき)・胸痹(きょうひ)などの古典記述に該当
肝気鬱結型:ストレス・感情抑圧で「気」が詰まる
痰湿阻絡型:胃腸虚弱・冷え・湿により流れが悪くなる
脾胃虚寒型:食欲不振・消化力低下・冷えが背景
気陰両虚型:長期の疾患で体力・潤いが不足した状態
ポイントは、「通じない=気・津液・食が滞る」ことと、ストレスとの深い関係。
9. 鍼灸でのアプローチ
当院では以下のような統合的アプローチを行っています
● 全体のバランス調整
肝鬱・脾胃虚・痰湿・瘀血などを弁証し、対応経絡を選定
中脘・天枢・足三里・内関・膻中などを用いて気機を整える
食道周囲の緊張や、胸郭・横隔膜の緩和施術を併用
● ストレス・情緒への対応
百会・神門・太衝・肝兪などで肝気の巡り・自律神経を整える
耳鍼・温灸・吸玉療法も併用可能
● 生活指導
嚥下体操・呼吸法・食後の姿勢
温度・刺激物の調整
食事内容のアドバイス(温・柔・潤)
10. 参考資料
The American Journal of Gastroenterology「アカラシア診療ガイドライン2020」
https://journals.lww.com/ajg/Fulltext/2020/09000/ACG_Clinical_Guidelines__Diagnosis_and_Management.18.aspx?context=FeaturedArticles&collectionId=2
まとめ
食道アカラシアは、身体の問題であると同時に「心と神経の通路の滞り」でもある疾患です。
治療法が進歩しても、「詰まりの不安」「再発の恐れ」「自律神経の揺らぎ」に悩む方は少なくありません。
だからこそ、西洋医学で構造を整え、東洋医学で流れと心を整える
その統合的なアプローチが、真の意味で「食べることの喜び」を取り戻す鍵になると、私たちは考えています。
当院では患者の利益を最優先に考えていますので、東洋医学に理解のある医師、病院からの連携、相談を歓迎しております。
※当院では、医学的な診断・治療・医療的アドバイスは一切行っておりません。鍼灸施術は医療行為ではなく、効果には個人差があります。
※持病をお持ちの方、治療中の方には、医療機関の受診・継続的な通院を強く推奨しています。
※当院の施術は、病気そのものへの治療ではなく、症状の緩和や体質改善、生活の質の向上を目的としています。
※症状や医療機関での治療状況によっては、医師の診断・同意書・連携が必要となる場合があります。

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