筋骨格系疾患
鼠径ヘルニア(Inguinal Hernia)
2025/8/2
1. 特徴
鼠径(そけい)ヘルニアとは、腸や腹膜の一部が下腹部の鼠径部(足の付け根)から皮膚の下に飛び出してくる病気で、一般に「脱腸」とも呼ばれます。
男性に多く、片側に起こることが多いですが、両側に及ぶこともあります。
初期には「膨らみ」や「違和感」程度ですが、放置すると痛みや腸閉塞、嵌頓(かんとん)と呼ばれる緊急状態を引き起こすこともあります。
2. 原因
加齢・筋膜のゆるみ
腹壁の支持力低下
腹圧の上昇
咳、便秘、肥満、重い物を持つ仕事や動作
先天的素因
鼠径管が閉じずに残る(特に小児)
手術後の筋力低下
腹部手術・前立腺手術などの影響
男性・高齢者に多い
特に60歳以上ではリスク上昇
3. 症状
足の付け根の膨らみ(立つと出て、寝ると引っ込む)
膨らみの部位に違和感・重だるさ・引っ張られる感覚
咳・排便時に膨らみが強くなる
長時間の歩行・立位で痛みや疲れ
嵌頓時(脱出した腸が戻らない):激痛・嘔吐・腸閉塞症状
4. 分類
外鼠径ヘルニア
鼠径管を通って脱出(成人男性に多い)
内鼠径ヘルニア
深部から脱出(小児や先天的素因に多い)
大腿ヘルニア
太ももの付け根から脱出(女性に多い)
再発性ヘルニア
手術後に再度発生するタイプ
5. 診断方法
視診・触診:立位での膨らみ、咳での膨隆の有無
超音波検査(エコー):小児や軽度の症例に有効
CT検査:重症例・他部位との鑑別
ヘルニアバルサルバテスト:腹圧で飛び出しを確認
6. 治療方法(西洋医学)
手術療法(基本的治療)
メッシュ法(Lichtenstein法など):合成メッシュで腹壁を補強
腹腔鏡手術(TAPP法・TEP法):低侵襲で再発率も低い
局所麻酔での日帰り手術も増えている
※保存療法(バンドや経過観察)は基本的に根本治療にならないため、外科的治療が標準
7. 予後と注意点(西洋医学)
手術後は多くの人が完治する
腹圧管理・便秘改善・姿勢の改善が再発防止のカギ
メッシュ術後の違和感や軽い痛みが残る場合あり
高齢者では体幹の筋力維持が予後を左右する
8. 東洋医学での解釈
鼠径ヘルニアは、東洋医学では以下のように捉えます
腎気虚型:腎の気が弱まり、体を下から支える力が低下(老化・精気不足)
脾虚下陥型:脾(消化吸収と“持ち上げる力”の担当)の弱りにより臓器が下がる
気滞型:ストレスや抑うつにより気の巡りが停滞し、膨満感や違和感に
寒湿型:冷えや湿気が下半身に溜まり、筋膜や経絡が緩む
東洋医学では、「形(構造)のゆるみ=気の支えの不足」と考え、補気・補腎・健脾・温通の施術で再発しにくい体づくりを目指します。
9. 鍼灸でのアプローチ
当院では以下のような施術を行っています
● 術後回復・違和感の緩和
腎兪・命門・関元などで体幹の気力と支えの回復
足三里・中脘・脾兪などで内臓下垂や腹圧の調整
鼠径部の瘀血や緊張の軽減(気衝・大赫・衝門など)
● 予防と再発防止
補腎・補気・補脾を柱に、腹圧を自然に支える身体づくり
呼吸指導・下腹部の安定化・姿勢改善を含む運動指導も併用
必要に応じて温灸・吸玉・お灸セルフケアも提案
10. 参考資料
日本ヘルニア学会「鼠径ヘルニア診療ガイドライン2015」
https://jhs.gr.jp/pdf/sokeibuhernia_guideline2015.pdf
まとめ
鼠径ヘルニアは、「出てしまったから手術」で終わらせるのではなく、
「なぜ出たのか?」という体の構造と気の支えの崩れに向き合うことが、再発予防と根本改善につながります。
西洋医学での構造的修復と、
東洋医学での気の支え・体の整え、
両者を統合することで、再発しにくく、動ける体づくりが可能になります。
当院では患者の利益を最優先に考えていますので、東洋医学に理解のある医師、病院からの連携、相談を歓迎しております。
※当院では、医学的な診断・治療・医療的アドバイスは一切行っておりません。鍼灸施術は医療行為ではなく、効果には個人差があります。
※持病をお持ちの方、治療中の方には、医療機関の受診・継続的な通院を強く推奨しています。
※当院の施術は、病気そのものへの治療ではなく、症状の緩和や体質改善、生活の質の向上を目的としています。
※症状や医療機関での治療状況によっては、医師の診断・同意書・連携が必要となる場合があります。

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