耳鼻咽喉疾患
加齢性難聴(Presbycusis)
2025/8/3
1. 特徴
加齢性難聴とは、年齢とともに少しずつ聴力が低下していく状態を指します。
特に高音域から聞き取りにくくなり、言葉の聞き分け(明瞭度)も低下していきます。
会話で「聞こえない」のではなく、「何を言っているのか分からない」と感じるのが特徴で、人との会話が億劫になり、社会的孤立や認知症リスクを高める要因にもなります。
2. 原因
蝸牛内の有毛細胞の変性・減少(聴覚受容器の老化)
血流低下:内耳は非常に細かい血管で構成され、虚血に弱い
脳の聴覚中枢の劣化(情報処理能力の低下)
長年の騒音曝露(ヘッドホン・環境音)
糖尿病・高血圧・高脂血症などの全身疾患の影響
遺伝的要因・ストレス・耳垢の蓄積なども関連
3. 症状
会話が「音としては聞こえるが、意味が取れない」
テレビの音が大きくなったと家族に言われる
会話中に何度も聞き返す/会話を避ける
高い声(女性や子ども)が聞き取りにくい
騒がしい場所で会話が困難になる
音が二重に聞こえる・こもる感覚
耳鳴りを伴うこともある
4. 分類(テキスト形式)
加齢性難聴は、以下のように分類されます
感音性難聴
内耳(蝸牛)や聴神経の障害によって音を「感じる力」が低下するタイプ。加齢性難聴の多くがこの型。中枢性難聴
音は聞こえても、「言葉の意味を理解する力」が脳内で低下。脳の老化や認知機能の関与が大きい。混合性難聴
感音性+伝音性(鼓膜や耳小骨の問題)を併せ持つケース。
5. 診断方法
聴力検査(純音聴力検査):各周波数帯の聞こえを評価
語音明瞭度検査:音は聞こえているが、言葉が聞き取れないかを確認
ティンパノグラム:中耳の状態を確認
耳鏡検査:耳垢・炎症・鼓膜の状態
必要に応じて脳画像(MRI)や血液検査も行う
6. 治療方法(西洋医学)
補聴器装用(最も有効な対処)
適切な時期に導入することで、認知機能低下や孤立を防ぐ聴覚リハビリテーション:補聴器の使用練習・音声トレーニング
生活習慣病の管理(高血圧・糖尿病・脂質異常症)
内服薬(循環改善薬・ビタミン剤など)は根本改善は難しいが補助的に使用
人工内耳手術(重度例のみ)
7. 予後と注意点(西洋医学)
一度失われた有毛細胞は再生しないため、進行を止めることはできても回復は難しい
早期の補聴器装用で脳の聴覚野の萎縮・認知症を予防できる可能性がある
周囲の理解と支援が症状の進行予防に大きく関与
「歳のせいだから」と放置せず、積極的にコミュニケーション環境を整えることが重要
8. 東洋医学での解釈
加齢性難聴は、東洋医学では以下のように捉えられます
腎精虚損型:加齢により“腎”が衰え、骨・髄・耳の力が弱まる(耳は腎の華)
肝腎陰虚型:目・耳・脳に熱がこもり、耳鳴りや聴力低下が起こる
気血両虚型:血液と気の不足で、耳を養う力が落ちる
痰湿型:代謝の滞りで、耳周囲の経絡が閉塞し、こもったような聞こえ方になる
瘀血型:血の滞りによる内耳循環不良 → 慢性的な聞こえの悪化
東洋医学では「耳は腎に通じ、五志では恐れに通じる」とされ、“腎”と“心”の調和が聴覚の安定につながると考えます。
9. 鍼灸でのアプローチ
当院では以下のような施術を行っています
● 聴力低下への直接アプローチ
聴会・翳風・完骨・風池など耳周囲の経絡を刺激し、血流と神経伝達を促進
腎兪・太谿・命門などで腎精を補い、老化予防と聴力維持
耳鍼(外耳・耳背部)を併用して反射的刺激を加える
● 体質と循環の改善
肝兪・三陰交・血海:血の巡りと肝腎の調整
脾兪・中脘・足三里:消化吸収と全身代謝の底上げ
百会・神門・内関:心身の安定と高齢者の睡眠改善にも対応
● 生活指導
耳を温めるケア(温灸・耳マッサージ)
音読・音楽療法など脳の聴覚活性化を促す方法も指導
まとめ
加齢性難聴は、「聞こえない」ことよりも、「聞き取れない」「理解できない」が問題。
それは、耳だけでなく脳・血流・腎・心の問題として捉えるべきサインです。
統合医療では、
● 耳の血流を促す構造的アプローチ
● 腎・肝・脾の体質強化
● 自律神経と脳機能の再活性化
の3方向から、聞こえる力を支える総合ケアを行います。
「もう歳だから」とあきらめず、
“今ある聞こえ”を守り、“まだ聞こえる力”を育てていきましょう。
当院では患者の利益を最優先に考えていますので、東洋医学に理解のある医師、病院からの連携、相談を歓迎しております。
※当院では、医学的な診断・治療・医療的アドバイスは一切行っておりません。鍼灸施術は医療行為ではなく、効果には個人差があります。
※持病をお持ちの方、治療中の方には、医療機関の受診・継続的な通院を強く推奨しています。
※当院の施術は、病気そのものへの治療ではなく、症状の緩和や体質改善、生活の質の向上を目的としています。
※症状や医療機関での治療状況によっては、医師の診断・同意書・連携が必要となる場合があります。

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